折形 の 折り方

このページでは、折形の折り方について概説いたします。ただしここではさまざまな種類のごま塩包みなど、折り図に従って折り進めれば、どなた様の手によろうともほぼ同じ姿に仕上がる、言わば ”折り紙” 的性格の強いものや、箱に施す掛け紙のごとく、縦方向の真っ直ぐな折り襞のみを設けるものには触れておりません。

今日の暮らしにあってすぐに役立つ場面は稀であるかもしれませんが、折形の真髄は、襞を折り出す幅や角度など、折り手の裁量に委ねられるところが多いものにこそ見出すことができるものと私は感じています。そうした、ややもすれば多くの方が戸惑いを覚えがちな折形にも目を向け、皆様に慣れ親しんでいただくためのお手伝いができれば嬉しく存じます。

なお、より詳細につきましては、YouTube :「折形自由自在」をご覧ください。以下の図版はすべて、この動画から抽出したものです(当ページ最下部でご覧いただくことができます)。


そもそも「折形」とは


以下、基底部の形状により、3つの類型に分けて見てゆきましょう。


この先、基底部の向かって左=下がえに2段、向かって右=上がえに3段の襞を持つものを採り上げ、説明を続けます。

向かって左、下がえの襞については次の2通りが、

向かって右、上がえの襞については、折り込み/折り返しの組み合わせにより、合計8通りの折り出し方があります。


個々の襞を平行に設けるのか、広がりを持つものに仕立てるのかによっても、随分と異なる印象を持つ姿を示しますので、これらの組み合わせで作ることのできる折形の数は無数と言ってもよいほどにあり得るのでしょうが、幾つか、思いつくままに。




同じ組み合わせで、同じように折ったつもりでも、ほんの少しの幅・角度の違いによってその風貌が異なってしまうことがあります。

動画では、私なりの観点で個々の形についての寸評を示しております。ご参考になりますなら。

もちろん折形は、包まれるものが中に収まった姿をもって、その均整・美しさを判ずるべきでありますしょうけれど・・・。


こうした均整を図る上で必要となるのは、言うまでもなく折り手の「眼」に他なりません。

デッサンや書道を学ぶとき、基礎過程で用いられるデザイン用スケールや下敷きと同じような工夫が、その「眼」を養う手助けとなりましょう(もっとも、配置すべき構成要素は、幾筋かの単純な直線と、それらによって規定される、形状も面積も、さほど選択の余地が与えられていないいくつかの面に過ぎませんが)。



折形は、しばしば檀紙を用いて折られます。このとき、ご注意いただきたいことがございます。

時折、檀紙の ”しぼ”(皺)が縦=垂直方向に流れるようにお使いの様子を見かけることがあります。おそらく、下掲図(『貞丈雑記 3』、平凡社・東洋文庫より)の如く、木目が縦となるようにする木地の使いように影響をされてのことであろうかと思います(当方、木箱の件につきまして詳細を知るものではございませんが、おそらく、箱の身(モノを収める本体の底)を「地」とすれば、蓋は身に上から被せることになるので「天」に相当すると申せましょう.陰陽の観点から見れば身は「陰」となり、従って木目は横に。一方、蓋は「陽」に当たるゆえに、木目は縦に据える、このような事情が背景に存するのではございませんでしょうか)。

しかし、多くの和紙は横長に据えて使うように作られています。檀紙も例外ではありません(少なくとも、私が作業をしている関西文化圏にて、普通に入手できる品の場合は)。

紙は次図・下方の青の矢印のごとく、簀桁(すげた)を<主として前後に>揺らせて漉かれます(繊維を絡ませるため、左右にも揺り動かしますが)。従って、紙の繊維は赤の矢印の方向に並ぶことになります。これをこそ、「紙の目」の流れと見なければなりません(図版は『職人尽歌合』、国会図書館デジタルコレクションより)。

このことは、紙を手で裂いてみると容易に確認することができます。

檀紙を下図・赤矢線のごとく「紙の目」の流れる方向に従って、ほぼ真っ直ぐに裂くことは可能ですが、「しぼ」の流れに沿って黄矢線の方向に裂こうとすれば、たちまち紙は抵抗を示し、それこそ「しわくちゃ」になってしまうでしょう(こういう仕儀を古来、「横紙破り」と言い習わしてきました)。

無論、貴重な資源である紙を無駄にせぬため、やむなく縦横をたがえて使わねばならない場合もあることと思いますが、それは ”本来の紙のありよう” からすれば、好ましからざる用法であるかもしれません(なお、これはいわゆる「たとう折り」などのように、仕上がりの姿において、”しぼ” の現れる方向が水平/垂直になる場合のこと.斜めに現れる場合には、折り出すときの紙の据えように、あまり神経質になる必要はないでしょう)。