水引に代わる紙の帯の結び方

「金封やポチ袋を折ることはできても、水引を結ぶのが難しくて・・・」とおっしゃる御仁は少なからずいらっしゃるであろう。

紙の帯を巻き、継ぎ目を裏で糊留めをするか、表側にてシールを貼るなどの対応をなさっておいでのことと思うが、ここに一つ、体裁よく紙の帯を仕立てる方法があるので紹介しておこう。

御婦人の付け髪(かもじ)を結わえ付けるのにしばしば用いられてきたもので、今日でも巫女さんの後ろ姿で目にする機会はあろうけれど、その結び方はほとんど知られていないのではないかと思う。


決して難しい結びではないが、難点が二つある。一つは、基底部が平行でなければならないこと。もう一つは、帯の長さ。

帯の両端を包みの外に出さない(基底部に収める)場合、必要となる帯の長さは < 包みの幅×5 + 帯の太さ×4 > であるが、実際には幾分かの余裕も必要となるので、かなりの寸法が要求されることとなる。標準的な奉書の横幅は53センチなので、帯の幅を1センチ程度とした場合、包みの幅は9センチ強が精一杯となろうか。


下掲図は『伊勢家礼式雑書・第七巻』、「たたみもとゆひかけ様(畳み元結いの掛け方)」の図(国会図書館デジタルコレクションより)。

1頁目の ※ のところに「これにて二まはし巻く」、すなわち、「この部分で2回巻き付ける」との指示がなされている。


同様の結び方は、『類聚婚礼式』や、結び方の技法に関する名著『図説 日本の結び』(藤原覚一著、築地書店)にも掲載されているが、ともに一度巻いているだけなので、後ろを回り向かって右から結び目をくぐった帯は、言わば結び目の中を通り抜けているだけなので、結束の力は弱く安定しない。

参考までに『類聚婚礼式』掲載の絵図も引用しておこう(国会図書館デジタルコレクションより。巻き付ける方向は左回りになっている)。なお、同書には『化粧考』からの引用(図版もか)として、「平元結・中の元結」の名が併記され、また『図説 日本の結び』にては「中元結び」の呼称が当てられている。




上の図版で充分であろうかとは思うが、念のため、経過を写した写真も載せておこう。


白赤など、左右を異なる色にしようと思えば、最初に下掲写真・上段・左のごとく据えた後、同じ工程に従えば右の写真に至る。

下段の写真は、帯の左右の端を適宜なところで折り返し、中央の結び目に挟み込んだもの。他にも多少の工夫が可能であろうが、すぐ上に示した如く、左右の色を違えるように結んだ場合には下段写真の下、黄色い〇印の箇所(結び目上方に現われる小さな三角形部分、また、それより先の、向かって右に向かう、通常の仕立てでは裏側になるところ)にて、天地が逆になる。ほんのわづかなところではあるが、図柄の入った紙を用いる際には注意が必要かもしれない(中央・結び目の形成時に、くぐらせる方向を逆にすれば解消はするが、下から上に巻き上げる下克上を容認することになるのでお勧めはしない)。

まぁしかし、小細工せぬのが美しい。

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